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「野に山に風光る日のコンサート」
 
「今は昔、ヘンデルという作曲家がフルートと鍵盤楽器のためのす てきな曲を書きました。その曲は・・・。」
さて、この文章からどのような楽器を思いおこされましたか?
銀色に輝くフルートと黒いグランドピアノ?
いえいえ、この二つの楽器はバッハやヘンデルの時代には、今とは まったく異なっていました。その頃は木製のフルートと、弦をはじ いて音を出すチェンバロだったのです。二つの楽器は共に、フラン スやドイツ、イタリアのなどの宮廷を中心として、たいへんもては やされていました。

昔のフルートとチェンバロVS今のフルートとピアノ。
これらを目の前で聴きくらべ、音楽の歴史を肌で感じてみてください。
300年の時を経てここに行われる、夢の競演/共演!


2010年4月11日(日) 出演者 プログラム

2010年4月11日(日)

昼の部 
13時開演 (12時半開場)


夕の部 
16時30分開演(16時開場)

出演 

フルート&バロックフルート   太田里子

ピアノ
  鷲野彰子

チェンバロ
  三島かおる
 プログラム

J.S.バッハ《フランス組曲 第5番》
A.ヴィヴァルディ《四季》 
W.A.モーツアルト《トルコ行進曲》
E.H.グリーグ《抒情小曲集》より〈春に寄す〉〈蝶々〉
F.プーランク《フルートとピアノのためのソナタ》
ほか

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プロフィール
フルート&バロック・フルート:太田里子

相愛大学音楽学部卒業。同大学研究科修了。第6回ソリストコンテスト部門優秀賞受賞。昭和音楽大学大学院修士課程音楽研究科を修了。2002年ブリュージュ国際古楽コンクール、セミファイナリスト。フルートを平尾多美納、伊藤公一、西田直孝、有田正広の各氏に、バロック・フルートとその他の時代楽器を有田正広、M.アンタイの各氏に師事。色々な時代のフルートを用いてソロや室内楽を行うほか、オリジナル楽器によるオーケストラのコンサート、レコーディングにも参加している。

ピアノ:鷲野彰子

大阪府出身。大阪府立北野高校卒業。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻音楽コース卒業後、ニューヨーク州立大学パーチェス・カレッジ大学院に授業料半額免除生として在籍、修了。その後、オランダに渡り、王立デン・ハーグ音楽院でフォルテピアノ科卒業、ピアノ科・室内楽科修了。大阪大学大学院文学研究科(音楽学・演劇学)、京都市立芸術大学大学院音楽研究科研究生。ピアノを、上野真、D.クラウス、P.コメン、坂本千鶴子、C.ソアレス、S.ブラウン、A.ロトーの各氏に(順不同)、室内楽及び伴奏法をH.アイザッカース氏に、フォルテピアノをS.ホッホランド氏に師事。1998年第2回堺国際ピアノ・コンクール第4位入賞。北オランダ放送に出演。現在は東京と大阪を中心に演奏会を行っている。

チェンバロ:三島かおる

東京学芸大学大学院修士課程修了後、ケルン大学、大阪大学大学院文学研究科で音楽学専攻、博士課程修了。文学博士。専門は西洋音楽史、演奏論など。現在ソロ奏者また通奏低音奏者として活動中。チェンバロを亀谷喜久子氏に師事、ヨーロッパ各地のマスター・コースに参加・修了、Ch. ファー、K. フェルヘルスト、S. ヘンストラ各氏らのレッスンを受ける。京都市立芸術大学、同志社女子大学、甲南女子大学、神戸山手女子高等学校、各非常勤講師。

「音の歴史をたどって」                                       古谷 貴徳
 岡町駅を降りて10分ほど歩くと突然、雰囲気のある建物がみえる。黒い壁には味のある筆文字で看板が掲げられていた。「野に山に風光る日のコンサート」今回の会場、桜の庄兵衛である。立派な門をくぐり受付。会場の大広間に入る・・・前に、お庭を拝見。しっかりと手入れされたお庭をみていると、ここが都会の真ん中ということを忘れてしまう。

会場である大広間に入ると、不思議な空間というのが正しい表現なのか?畳が敷き詰められている広間の両角に離してモダンピアノとチェンバロが置かれていた。特に、チェンバロは窓越しに庭園がよく見える場所にあり、和と洋のコラボレーションが意外にミスマッチではないのが不思議。チェンバロが楽器というよりも、調度品に近い感じだったからだろうか。

今回のコンサートは、楽譜が書かれた時代の楽器を用いて演奏するというだけではなく、同じ曲、例えばシチリアーノ(J.S.バッハ)をバロックフルートとチェンバロの昔の組み合わせと、モダンピアノとモダンフルートの現代楽器という両方の組み合わせで演奏し、聴き比べることが出来るとても画期的な取り組みであった。

確かに、作曲家は進化した現代の楽器の音を知らない。ということは当時の楽器で演奏をすることで、全く違った解釈も生まれてくるのでは?
バロックフルートを演奏された太田里子さんも、作曲するときの音のイメージは作曲された時代の楽器が元になっているはずで、それを感じてみたいという思いがバロックフルートを始められた原点だそう。時代の違う楽器を離して置いたのも、視覚的にもイメージして欲しいからという思いからだそうで、曲や楽器という部分だけでなく、細部まで配慮されていた。

そしてコンサートがスタート。プロローグは三島さんによるチェンバロの演奏。プレリュード(L.クープラン)、フランス組曲第5番(J.S.バッハ)。チェンバロのはじけるような高い音が軽快に響く。当時はまずその場の雰囲気をみて即興で1曲弾いていたらしい。今回もそれに準じた構成。にくらしい演出である。曲の合間にチェンバロという楽器の構造を説明してくれる。ピアノとは違って弦をはじいて音を出し、音のボリュームや広がりを出すためには、鍵盤をずらし、はじく弦の数を増やすとか。さすがに大学で講師をされているだけあって、非常にわかりやすい。

次に、トルコ行進曲(W.A.モーツァルト)をチェンバロとモダンピアノで聴き比べ。お客さんも馴染み深い曲だからか、違いをしっかりと感じ取ろうとしているのがわかった。もともと軍楽隊の曲とは知らなかったが、チェンバロのトルコ行進曲を聴いていると、打楽器やシンバルなどが浮かんでくるようだ。曲としての迫力というかリアル感があるように感じられた。

続いて、バロックフルートの登場。
バロックフルートという存在自体を知らなかったが、はじめてみる其れの形はなじみ深い。木製の横笛。ジョイントが4箇所ぐらいあり、まさに小学校の時のリコーダーが横になったものだ。それもそのはず、そもそもフルートとは縦笛のことを指していたらしい。19世紀、コンサートホールが大きくなるにつれ、フルートの音量も必要になり改良されたとのこと。フルートは木管楽器という意味がやっとわかった。音はとてもやわらかく音量は小さめ。音は演奏者で作られる感じで、演奏者やホールやその土地の気候によって様々な音色が奏でられるのではないかと思えた。シチリアーノ(J.S.バッハ)の演奏。バロックフルートとチェンバロのハーモニーはやわらかい音と金属音のメリハリが新鮮で聞き入ってしまう。

休憩時には説明のあった楽器の構造を間近でじっくり見ることもできた。この距離感だから出来ることでとても貴重だ。

いよいよ後半。抒情小曲集(グリーグ)を鷲野さんがモダンピアノで演奏。完成されている楽器だからか構えずに聴ける。曲もそうだがホッと一息。
最後に四季(ヴィヴァルディ)を今回の演奏会の為に、バロックフルート/チェンバロ/モダンフルート/モダンピアノ用に特別アレンジ。フルートの太田さんがチェンバロとモダンピアノの間を行き来するなど、躍動感のある演奏で観客と一体になる。そしてアンコールも盛り上がり、演奏会が終了。あっという間でした。

このような企画は素人の私にもとてもわかりやすく、興味深く、そして音楽の楽しみ方を広げてくれるものであった。演奏者が間近にいて、観客と対話しながら演奏会が進んでいく。昔で言うサロン?と勝手に想像を膨らませてみたり。。。家を開放し、このような機会を精力的に作っていらっしゃる奥野さんやお手伝いしている皆さんにはとても頭が下がります。とても贅沢な休日を過ごさせていただきました。どうもありがとうございました。