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2007年4月29日(日)   Vol.40
『はつなつの光燦々コンサート』 ジャズトリオ(トランペット:唐口一之/ピアノ:竹下清志/ウッドベース:荒玉哲郎)  
「どんど舞い立つコンサート」
  大好きなこの季節に、大大大好きな3人のミュージシャンをお迎えすることができました。

ゴツイ手から繰り出されるやわらかい音。閉じた目のむこうから紡ぎ出されるまぶしい音。

グラスとろうそくの灯りの代わりに極上の輝く緑の光と風をご用意しました。 さあ、JAZZ通の方もそうでない方も新しいJAZZライフのはじまりです。
プロフィール
  トランペット  唐口 一之(KazuyukiKaraguchi)
唐口 一之 1954年広島県生まれ。 中学2年よりブラスバンド部でトランペットを始める。
関西学院大学を卒業する頃から、関西のジャズ喫茶(ライヴハウス) を中心に演奏をし始める。
81年には渡米しニューヨークのJAZZを体験。
ミッキー・ロカー(ds) ハンク・ジョーンズ(p)、レイ・ブラウン(b)、オテロ・モリノ(std)、 ミルト・ジャクソン(viv)等との演奏経験により深いインパクトをうける。
現在、自身のカルテットの他、西山満グループなどで活躍。 第2回中山正治ジャズ大賞受賞。 http://comode.info/KK/K-K-Top.htm

ピアノ     竹下 清志 (Kiyoshi Takeshita)
4歳からピアノを始め、大阪教育大学特音ピアノ科卒業 在学中にジャズの魅力にひかれて演奏活動を始める。 共演したミュージシャンも多く、ジミースミス、アートブレイキー、日野皓正、北村英治、ジョージ川口、中本マリ、久保田利伸など。
オーケストラでは大阪フィル、名古屋フィル、東京シティーフィルなど。 大阪芸術大賞第1回受賞。

ウッドベース  荒玉 哲郎(Teturo Aratama)
87年、竹下清志氏のグループに参加、ミッキー・ロウカーやオテロ・モリノウらと共演し 94年より単身渡米。
帰国後は綾戸智絵をはじめ様々なレコーディングに参加、 コンコードジャズフェスティバル大阪に出演するなど精力的な活動を展開。 05年にはアルゼンチンを訪問し大統領官邸にて演奏会を行い好評を博す。
現在はジャズのみならずブラジル音楽やアルゼンチン音楽のグループで活動する傍ら 音楽専門学校にて後進の育成にも力を注いでいる。
http://www.rocketz.co.jp/aratama/

プログラム
 
ソラリスの海、音の波                                           北野勇作
 ソラリスの海というのがある。もっとも、それはこの世界に実在するのではなく、スタニスワフ・レムというポーランドの作家のSF小説に登場する異星の海である。地球からはるか彼方にある惑星ソラリス、その全面を覆っている海は、それ自体がひとつの巨大な生き物なのだ。しかもその海は、生きているだけではなく、その内部では高度な思考や計算らしきものまで行われていて、海の表面はそれを反映するように様々な図形や構造を次々に形作る。観測ステーションに派遣された科学者はそれらを調査し分析してソラリスの海の思考を探ろうとするのだが、それは人間の思考とはとはあまりに異質過ぎて、従来の論理や科学はまったく歯が立たない。以前に派遣されてきた科学者は、無力感にとらわれて部屋に引きこもってしまい、新しく派遣されてきた主人公も結局は同じように途方にくれるしかない。と、なぜそんなSF小説のことを長々と書いたのかといえば、演奏を聴きながら、これはソラリスの海のようなものなのではないかと思ったからなのだ。音の波が次々に生まれ、それらが互いに作用を及ぼしあい、盛り上がったり沈んだりうねったりしながら、ひとつの生き物であるかのように、いろんな形や質感や速度を作り出していく。まさに小説中のソラリスの海のイメージそのままなのだ。

 こういうものを分析したり、出来合いの理屈に無理やり当てはめてわかろうとするのは、結局はソラリスの海に対するそんな行為と同じことではないか。数値化したり狭い論理に押しこんで意味づけしてみたり、テーマだの思想だのそんなもっともらしいラベルを貼りつけてみたり。それでわかったような気にはなれるかもしれないが、たぶんそんなところに本質はない。

 というわけで、あの日の午後から夕暮れにかけて、私はそんなソラリスの海に身を浮かべていた。もしこれが小説なら、自らの理解を超えたそんなとんでもないものを前にして、悩んだり戸惑ったり苦しんだりしなければならないところなのだが、しかし幸いにして私はソラリスに派遣された科学者ではないから、調査も分析もする必要はないし、無理やりわかろうとしたり、わかったふりをする必要もない。ただただ、管と弦によって立ち上げられた音の波が目の前で見る見る膨れ上がったり、絡み合いながら立体的な構造を作ったり、一瞬で砕けたり、その雫が綺麗な軌跡を描いて飛び散ったりする、その運動や質感やリズムに、思わずおおっと声をあげたり、圧倒されてただ口をあんぐりあけたまま思考を停止させてしまったり、あまりの気持ちよさに手を叩いて喜んだりして、つまり楽しんでいればそれでいいのだ。

 案外、ソラリスに派遣されたあの科学者たちもそんなふうにしていれば、あんな袋小路に入り込んでしまうことなく、ソラリスの海とのまったく違う関係を築くことができていたのではないか。とまあそんな気楽なことを思ってしまうような、ひたすらに気持ちのいい演奏でした。

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