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2007年 2月10日(日)   Vol.39
『春へのあこがれコンサート』◆ヴォーカリスト「松田美緒(まつだ みお)」ライブ 
「どんど舞い立つコンサート」
  桜の庄兵衛が、さまざまな芸術をともに愉しむ催しを初めて、九つめの春を 迎えました。
いつの季節も、みなさまの笑顔やさざめき、拍手に満たされることで古き庄屋屋敷は、
今も生き続けているのだと感じることができました。
そんな感謝の気持ちをこめまして、今年初めてのコンサートも、歌の名手をお迎えします。
日本からは遙か遠いのに懐かしさがこみあげてくる国、ポルトガル。
その国のファドに惹かれてポルトガルへ渡った松田美緒さんです。
大西洋を越えて、ブラジルのサンバやボサノバ、カーボ・ヴェルデのモルナと ポルトガル語圏の
音楽に魅了され、今ではポルトガル語の作詞まで手がけられます。
桜の庄兵衛出演後はすぐにブラジルとか。
この機会にぜひ、美緒さんの豊かな歌声に触れて下さい。
プロフィール
  松田 美緒( まつだ みお)
1979年秋田県生まれ、九州・京都育ち。幼少時代より世界の音楽に慣れ親しむ。

19歳の頃、ポルトガルのファドに自己表現の形を見いだし、歌い始める。

2002年よりポルトガル訪問を重ね、2003年、1年間ロータリー財団の奨学生としてリスボンに留学、本場でのファドを習得。

2004年、ブラジルでの音楽祭にポルトガル代表グループのヴォーカリストとして出演するほか、大西洋の諸島国カーボ・ヴェルデに歌手として1ヶ月滞在。以後、活動の拠点をブラジルに移し、ファーストアルバム『アトランティカ(Atlantica)』をレコーディング。

2005年8月ビクターよりリリース。2006年11月にはセカンドアルバム『ピタンガ!(Pitanga!)』をリリース。

現在、日本、ブラジル、ポルトガル、アンゴラ、東欧など様々な地域のアーティストと共に独自な音楽世界を構築中。


松田美緒HP
http://www.miomatsuda.com/
プログラム
  Lua na Chuva (雨降りお月)
Lisboa Cidade (リスボン・私の町)
Romaria (祈り)
Saiko (さいこう)
Igunoporu (イグノポール)

どんどん広がる松田美緒の世界                                     中森 久雄
 松田美緒の最近の活躍は、ブラジル音楽愛好家の間ではかなり衝撃的な事件だ。

 6年前に初めて会ったときは、ポルトガル音楽のファド大好きまっしぐら!という感じの初々しい娘だったが、やがて現地での留学滞在を経て本格的なファドの唱法を身につけただけにとどまらず、ポルトガル語圏の様々な音楽に取り組み、最新のアルバムでは、土着色がより強く、世界的には知名度の低い、ブラジル北東部地方の伝統音楽を大いに採り入れ、その完成度の高さがブラジル音楽通をうならせているのだ。

 ポルトガルとブラジルは、今なおポルトガル文化を共有しつつ、心象は「まったく違う国」である。音楽についても然り。普通の日本人にとっては、一つの外国音楽に習得するだけでも大変なのに、2つの違う国の音楽を、数年のうちに十分両立させ、しかも本人はまだ伸び盛りの年齢と来たら、何が一体どうなっているのやら。その二つの音楽を、これまた伝統的な日本家屋のお座敷で、じっくりと鑑賞できるという、春の珍事、ならぬ春へのあこがれコンサートが開かれたのであった。

 ブラジル音楽をまとめた前半のステージは、サンバや北東部音楽の古典的な名曲に自作曲を織り交ぜた構成。ルイス・ゴンザーガによる北東部音楽の古典「パライーバ」を日本語でカヴァーしたり、日本の名曲「雨降りお月」をポルトガル語でカヴァーしたり、ブラジル北東部の赤い果実をモチーフにした自作曲の「ピタンガ!」では、両方の言語で歌ったり。聴き手が日本人であろうが、ブラジル人であろうが、言語の垣根をひょいっと、しかもごく自然に跳び越えて、こっちの庭に来てくれる柔軟さは、実際にはなかなかあり得ないことで感嘆する。

 ハイライトは、エリス・レジーナの歌で有名な「巡礼歌」。ギター川瀬さんとの息のあった演奏でしっくりと聴かせ、表現により一層の深みがあって良かった。

 桜の庄兵衛さん特製の、前述ピタンガのおいしいジュースが振る舞われて、嬉しくちょっと一息の後に始まった後半のステージは、彼女の原点であるファドが中心で、安定感があり、やはり良かった。2曲目の「リスボン私の街」で、心はリスボンへ誘われ、桜の庄兵衛さんの太い梁と印象的にコントラストをなすきれいな白壁が、ポルトガルの家々のそれと重なり、まるでその中で聴いているような錯覚に陥った。3曲目の「Maria Lisboa」では、この日唯一果敢に生声で歌ってくれた。やっぱり、ファドはこうでなくては。聴き手と心を通わせ、楽しめるひととき。彼女は、それをずっと求めているのだろう。そこが日本であれ、ポルトガル語圏の国々であれ、どこでも彼女にはそれが出来るし、実際にそうしている。

 十分な歌唱力で、言語の壁をものともせず、ファドというジャンルだけにとどまらず、日本の古き歌へも及ぶ、良い歌へのこだわりをもって。そして最後の曲で「Saiko」だよと歌いつつ、まだ見ぬ最高を追求するあくなき知的好奇心故に、近くまた新しい研鑽の旅へ出るという。どんどん旅へ行って欲しい。そして戻ってきて、また新たなSaikoの成果を私たちに見せてくれるだろう。

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